'04年購入。
Ken Smith の6弦は、多弦ベースの草分けである。
チック・コリアのElektric Band のジョン・パティトゥッチが、【よみうりランド】で行われた『ライヴ・アンダー・ザ・スカイ』で、重低音から高音のソロまで縦横無尽に弾き捲り、大層なインパクトで実にカッコ良かった。
彼のベース教則ビデオでも、そのプレイと音色をふんだんに味わうことが出来る。
以来このベースが気になっていた。(ジョンのはスルーネックのタイプ)
Ken Smithのベースは高級な銘木を使い、高度な技術で作られる事で有名だ。
特に多弦ベースの完成度は高い。
アメリカではソウルやR&B系のアーティストやスタジオ・ミュージシャンが使っているのをよく見掛ける。
フュージョン系のテクニカル・ベーシストにも人気がある。
さてこのベース、後で分かったのだが、実は、チャック・レイニーが注文して作らせたプロト・タイプだったのである。
'93年当時、Ken Smithのカタログにはボルト・オン・ネックの6弦ベースは存在しない。
CR-6Vという名前のCRとは、Chuck Raiheyのことなのである。
但し、本人が使っていたかどうかは定かではない。
Ken Smithのベースは、一種独特の癖っぽい音がする。
特にピックアップをセンターにした時の高音部の、キンキンとかピキンピキンといった様な響きが特徴だが、このベースはそれが顕著でない。
実に素直な出音なのである。
その辺も、如何にもチャック・レイニーのために作られたベースらしいと思う。
実は私はKen Smithのそのピキンピキン響く音が嫌いだった。
音楽的な響きには思えなかったからだ。
Alembicの心地良いピンピンという響きとは違う、エグイものを感じてしまうのだ。
微妙な違いではあるが…
でもこのベースにはその嫌らしさが無かった。
だから買ったのだ。
Low-BからHi-C24フレットまで、見事なバランスでスッキリと鳴る。
ピックアップのバランスやイコライザーの使い方で、かなりバリエーション豊かな音色を出せる。
弾力のある豊かな低音は、歌のバックにも向いている。
ハイポジションでのコード弾きの音色は独特で、美しい。
明確な反応とハッキリした出音だから、ソロベースにも向いている。
テクニカル・ベーシストに人気があるのもうなづける。
Ken Smithのベースには、ボディーのデザインが3種類ほどあるが、私はこのタイプ(一番古いデザイン)が好きだ。
但し欠点がある。
ボディーウィングが短く、ストラップピンが12フレットの位置ではないので、手を離すとヘッドが下がってしまう。
また、6弦の1フレットはかなり遠くなる。
ストラップを外して、座って弾く方が楽だ。
また、幅広で平らなネックは、低音部を弾き続けると左腕に結構負担をかける。
ジョン・パティトゥッチの様にネックを立て気味にして弾くのが、疲れない秘訣かもしれない。
しかしスケールは34inchなので、弾き難いわけではない。
何れにしても、作り手の気合いを感じるベースだ。
どんなメーカーのどんなベースでも、最初に作った物が一番良いと思う。
大量生産物でも、最初のロットの製品が一番優れている。
人間が作るから、やはり集中力や気合いや思いが、時と共に薄れていくのであろう。
チャック・レイニーのために作ったプロト・タイプ。
そんな意味でも、これは価値ある一本である。
このベースは約一ヶ月の旅公演に連れて行ったことがある。
様々な音楽に対応出来るので、気分転換にとても役立ったものだ。
弾いていて、楽しくなるベースである。
(写真撮影:佐藤勝也)
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